どうして上司は無能ばかりなのか
「うちの会社の上司は無能ばかりだ」「管理職不適格な上司ばかりだ」こう思っている人は多いのではないでしょうか。このような評価は部下の立場から見た“不満”という要素もあるので、必ずしもフェアなものとはいえませんが、人事慣行が原因で「必然的にそうなってしまう」という部分があります。この記事では「どうして上司は無能ばかりなのか」「上司が無能な場合どうしたらよいのか」について解説します。
「無能な上司」が量産される仕組み
例として、平社員→係長→課長→部長という階層の組織があるとします。「平社員」として経験と実績を積み、優秀な成績を収めれば「係長」に昇進します。「係長」として経験と実績を積み、優秀な成績を収めれば「課長」に…というように昇進していきますが、当然ながら優秀な成績を収められなければそれ以上昇進することはありません。
その結果、優秀な「平社員」は「係長」に昇進しますが、「係長」としては優秀でなかった場合「課長」に昇進することはありません。しかし「平社員」に降格することもないため、永遠に「無能な係長」であり続けます。「優秀な係長」だった場合、そのうち「課長」に昇進します。「課長」としては優秀でなかった場合「部長」に昇進することはありませんが、「平社員」に降格することもないため、永遠に「無能な課長」であり続けます。このように、「優秀な上司」はさらに上の立場に昇進していきますが、「無能な上司」は昇進も降格もしないため、いつまでも同じポジションに留まり続ける傾向があります。
「無能な上司」を作らない方法はないのか
このような状況を避けるためには、成績の悪い社員を「降格」や「解雇」できるようにする必要がありますが、少なくとも日本の企業の人事慣行としては(法的に保護されていることもあり)配置転換はできてもあからさまな「降格」や「解雇」はよほどの理由がないと行わないため、「無能な上司」で埋め尽くされていくことは避けられません。そうであれば、「昇進」自体をより慎重に行うという案が考えられます。多くの企業では「卒業方式」といって、「平社員」として求められる能力を身に付けて結果を出した者を「係長」に昇進させますが、「係長」としての資質があることを示した者を昇進させる「入学方式」をとることが一つの案です。ただ、「係長」の資質は「係長」をやらせてみないとわからない部分も多く、「係長」を経験させることで資質が身についていくという側面もあるため、なかなか難しいと思われます。
野球チームに例えると…
このような仕組みで組織が無能だらけになってしまう法則は、提唱者の名前から「ピーターの法則」と呼ばれています。「無能な上司」の例を人材活用の観点からみると、「平社員」で有能であった者を「係長」で使い、「係長」で有能であれば「課長」で使うという応用を繰り返していき、これが破綻するまで続けられる(かつ、後戻りできない)ため「無能な上司」だらけになる、と言い換えることができるでしょう。
野球チームに例えると、負けパターンで登板するリリーフが良い成績を残した場合に、勝ちパターンのリリーフとして使ってみるのと似ているかもしれません。リードされている展開とリードしている展開では、相手の攻め方や試合結果への影響、かかるプレッシャーが変わってくるため、負けパターンで好成績を残したリリーフが勝ちパターンでも同じ成績を残せるとは限りません。勝ちパターンに配置換えしてみたところ、逆転負けにつながる投球を繰り返してしまうというのはよくあることです。野球チームであれば、再度役割を見直し、負けパターンのリリーフに戻すこともできます。しかし、企業の人事の場合、簡単には降格させられないため、打たれ続けるリリーフをそれ以降ずっと勝ち試合で登板させ続け、毎度毎度試合を壊すような状況になってしまうのです。
「無能な上司」の下で働くのは必ずしも悪くない
自分の上司が「無能な上司」だと感じる場合、どうすべきでしょうか。「無能」といっても様々なタイプがあるため、一概には言えませんが、私は必ずしも上司が無能であることはデメリットばかりではないと考えています。
まず、「無能な上司」が「ハラスメント行為を働く」など明らかに害のある行動をしてくる場合ですが、「しかるべき社内の窓口」や「上司の上司」に相談することで「異動」や「懲戒処分」などの厳しい対応をしてもらえる可能性が上がります。理不尽な話ですが、会社は「有能な社員」が少々問題行動を起こしても見逃しがちで、「有能な上司」を告発しても、きちんとした対応がとられないことがあります。
次に仕事についてですが、「無能な上司」は仕事があまりできないので、部下がやる気があれば本来任せられることのないレベルの高い業務に携わるチャンスがあります。最終的な責任は「無能な上司」にあり、あなたはあくまで本来の職務以上のことにチャレンジしているわけですから、失敗してもネガティブな評価がされにくくなります。また、「有能な上司」は結果を出す上司です。結果を出すために部下に強い負荷をかけるタイプもいるので、要注意でもあります。揉めた際に、「人事」や「上司の上司」が「有能な上司」の肩を持ちがちなのもネガティブ要素になります。
また、タイプによりますが「無能な上司」はマネジメントについてもやる気が無くなっていることが多いので、仕事の進め方や休暇取得の要望など、部下の要求にあまり異を唱えないことが多く、部下にとってある意味「やりやすい」状況になりがちでもあります。
「無能な上司」を追放すると「さらに無能な上司」がやってくるかも
会社としても「無能な上司」の存在は望ましくなく、可能な限り有能な社員を管理職に配置したいと思っています。今の上司が「無能な上司」であれば、何とかして上司を代えてほしいと思うかもしれませんが、今の上司は会社が考えた末、比較的ましな選択肢としてそこに配置されているのです。「無能な上司」が異動して喜んでいると、さらにひどい上司がやってくるというのはあるあるです。
「無能な上司」対策まとめ
・「無能な上司」は責任を負う役割だと割り切って、思い切ってチャレンジしましょう
・相対的に部下の立場が強くなるのをメリットととらえましょう
・どうしても我慢できないことは「上司の上司」に相談しましょう