「金融教育公開授業」見学

高校の「金融教育」の授業を見学しました

 某高校で行われた、金融教育公開授業を見学させていただきました。授業は50分で駆け足感がありましたが、面白い内容だったのでレポートします。

 授業のメインは、6人程度のグループに分かれて行う「金融人狼ゲーム」でした。消費者が3人の業者から勧誘を受けていずれかの金融商品を購入するというもので、役割は、購入者(1人)、サポーター(2人)、業者(3人)の3つに分かれています。業者はそれぞれ順番に4分程度の時間で自分の金融商品を購入者に勧めます。購入者は3人の話を聞いた後、どの金融商品を購入するかを決めます。営業トークの際にはサポーターも会話に参加し、購入者が最終的に買う商品を決める際は、サポーターと相談することができます。

 それぞれの役割の人には設定などが書かれた紙が渡され、その範囲内でアドリブを交えて自由にトークします。3人の業者が具体的にどんな商品を持ってきたかは(その紙が共有されなかったため)詳細がわからなかったのですが、業者Aの商品は未公開株詐欺の事例をアレンジしたもの、業者Bの商品はJ-REIT、業者Cの商品はロボアドを題材にした詐欺商品をアレンジしたものだったとのことです。恐らく、業者Aや業者Cは不自然に利回りが高かったり、元本保証などの金商法違反となるトークがなされており、詐欺であることを見破るべき要素が入っていたと思われます。

 さらに、サポーター2名のうち1名は詐欺師とグルになっており、購入者がAかCの詐欺商品を購入するようさりげなく誘導するよう指示されていました(最初の説明ではそうは言っていなかったので、購入者役はサポーターが信用できないことを知らなかったと思われます。人狼ゲームと言われていたので察していた人もいるかもしれませんが…)。

 結果はどうなったと思いますか。6グループ中、詐欺商品ではないBを選択したのは1グループだけでした。他の5グループは、業者(詐欺師)の営業トークと悪いサポーターの誘導に引っかかって、詐欺商品を選んでしまいました。 ロールプレイの後は、これまで書いたような設定の種明かしと、リスクとリターンはトレードオフであること(ローリスクハイリターンはないこと)、詐欺師が良く使うテクニック(不安を煽る、義務感を持たせる、恐怖を与える、救済策や妥協案を提示する)、詐欺の多くはポンジスキームであることなどが簡単に説明され、生徒数名に感想を発表してもらって終わりました。感想は「言われたことを鵜吞みにせず、自分で調べたり考えたりすべきだと思った」というようなものや「悪いサポーターの誘導が効果的で、身内を引き込むなどして勧誘すれば詐欺が成功しやすい」などの騙す側目線の意見も出るなど、ロールプレイならではの気付きが含まれていた興味深いものでした。

感想

 授業のやり方からすると、決まりきった知識と手順が頭に入っていればあとは求められるのは手際の良さくらいで、先生に(他の授業とは異なる)特殊な知識や技能が求められるようなものではなく、展開しやすいという印象を受けました(家庭科の先生が担当するという話をどこかで聞きましたが、今回担当されたのは公民科の先生でした)。ロールプレイを通して「騙す側」の目線も意識することができるので、詐欺に遭わないという意味で実践的な教育になっていたと思います。

 FPとして正直目線からの感想をいうと、今回の内容は詐欺か詐欺じゃないかという投資以前の内容だったことは少し物足りないです。合法的な金融商品でも、今回の詐欺師のようなテクニックで顧客の利益にならない商品が販売されているケースは多々あるはずで、そのような勧誘からも身を守れるようになって欲しいという想いを抱きました。また、今回の役割設定で出てくる「詐欺師に加担するサポーター」の役割を「顧客利益にならない商品販売を行う」という形でFPを名乗る人間がしているケースも世の中にはまだまだ多いと思います。その点にも思いを馳せてしまいました。ただ、合法的な(とはいえ経済合理性の観点から顧客利益にならない)商品を販売している業者を悪者にするような内容を公教育で取り入れることは難しいと思われ、その点は「学校で行う金融教育」の限界でもあるのかなと感じました。学校ではこのような内容に留め、より実践的な部分を学校から離れた何らかの形でFPが提供するような余地はあるのかも知れません。

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